アルザスワインのヴィンテージ
2003年
猛暑の夏が生んだ、アルザスワインの歴史の中で、ほぼ前代未聞の早熟なヴィンテージ。この年に匹敵するほどの天候条件は、1540年にまでさかのぼる必要があります!
「特別な」ヴィンテージ
天候
私達は、ヴィンテージの質を決定するのは自然であることを忘れてしまいがちです。2003年、自然はそのことを私たちに嫌というほど思い知らせてくれました!過去数年の流れとは異なり、2002年/2003年の冬は厳しく、それぞれ1月と2月に長い霜の時期が到来しました。3月、通年通りの気温によって、4月初めにやや早めの萌芽を迎えました。この間も、冬に逆戻りしたかのように気温が下がり、春霜が最も早熟な区画に被害を与えました。続いて、5月と6月に記録的な気温が観測され、通年より3週間早く、6月3日頃に非常に均一な開花が始まりました。
夏は猛暑で乾燥していました。8月、約15日間、気温が40度を超えたのです!降雨量が異常に低く、ブドウの木は地中深くの水源に頼らざるを得なかったため、軽い土壌では、ブドウの成熟がストップしてしまう可能性もあったのです。数か所の地域のブドウ畑では、雹を伴う嵐に見舞われ、深刻な被害を受けました。これらの要因によって、当然のことながら収穫量の低下と、何よりもブドウの成熟が加速されることが予測されました。
収穫
質の面からは、例外的な夏の乾燥した天候によって、素晴らしい衛生状態が保たれたことで、カビを原因とする病害の発生を抑えました。この年、ムストの酸度含有量が低かったため、欧州連合の特例としてアシディフィカシオン(補酸)が認められました。
収穫は例外的なほど早期に開始されました:
全体的な収穫量は1 004 000 hlで、前年と比べ18 %減です。その内訳は、AOCアルザスが822 900 hl (- 19 %)、AOCアルザス・グラン・クリュが40 500 hl (- 8 %)、AOCクレマン・ダルザス140 000 hl (-15 %)です。ヴァンダンジュ・タルディヴ(15 400 hl)の生産がやや上向きだったことに対し、文句なしの衛生状態によってセレクション・ド・グラン・ノーブル (1 000 hl)の生産が制限されてしまいました。
ワイン
前例のないブドウの成熟度と醸造の難しさに関する不確定要素にもかかわらず、このヴィンテージは私達に嬉しい驚きを与えてくれました。シルヴァネールとミュスカ・ダルザスは、完熟ブドウの味わいが豊かです。酸度が急激に低下するピノ・ブランとオーセロワは、非常に早く8月に収穫されました。リースリングは、9月頭に降った雨の恩恵を受け、軽い土壌のあちらこちらで発生した成熟不良の問題が解消されました。このヴィンテージで大最高を収めた品種の1つです。ピノ・グリとゲヴュルツトラミネールは、豊かでほのかな酸味があります。ピノ・ノワールは、この例外的な天候の恩恵を大いに受け、見事な色合いが特徴です。
アルザスワイン委員会(C.I.V.A.)
2004年3月
ビュルグレーベン2003-マルセル・ダイス
ピノ・ノワールとピノ・ブーロの混植混醸から生まれた豊かで力強いワイン。野生的で、焙煎されたような非常にスパイシーな香り。強烈な凝縮感ある豊満で力強い味わい。熟したタンニンが厚みを与えています。黒い果実とスパイスをの風味を感じる長い余韻。綺麗な造りの熟成向き赤ワインです。(2008年4月試飲)
リースリング・ビュルグレーベン2003-マルク・テンペ
ツェレンベルグの村の下方に位置する泥灰土・石灰岩・砂岩土壌のビュルグレーベンでは、一般的にゲヴュルツトラミネールが栽培されています。完熟した状態で収穫され、2年以上大樽で熟成させたリースリングは、レモングラスのアロマ豊かなワイン。ほど良い酸味によって美しいバランスを備えた、密度が高く厚みのある味わい。20年は問題なく熟成できるキュヴェ。(2007年4月試飲)
猛暑の夏によって、例外的に早期の収穫となった、あらゆる面で特別なヴィンテージ。2003年は、そのほとんどが個性的でバランスの良い白ワインと非常に美し色合いの赤ワインを生み出しました。若いうちに飲んだ方が良いワインは、早期に収穫されたことで、十分な酸味を有していますが、バランス感の不足からすぐに劣化してしまいます。大成功を収めたキュヴェは、完璧な成熟度のブドウを求め、アルコール度や残糖量が高くなるリスクを負いながらも、遅めに収穫されました。この2本は遅くに収穫され、シュール・リー熟成で長期熟成させたワインの代表格です。
ティエリー・メイエ(Thierry Meyer)
2016年、エノテーク・アルザス、講師