アルザスワインのヴィンテージ
2010年
少ない収穫量、並外れた爽やかさを持つ素晴らしいヴィンテージ
天候
ブドウ栽培者にとって、非常に複雑で難しい年となった2010年。これほどまでに様々な天候条件に見舞われたヴィンテージは非常に稀です。
この年の冬は、気温が極端に低い、長く厳しいものでした(12月19日、コルマール近辺では、マイナス20度を記録)。そのため主にゲヴュルツトラミネールを中心に、特に樹齢の若い区画では、芽が凍り付き膨大な被害を受けました。4月中旬頃にやっと萌芽した後、5月初旬までは気温は低く雨の多い日々が続きました。幸いなことに、5月末に気温が上がり、生長の遅れの一部を取り戻すことができました。6月20日頃に開花が始まったものの、芽に霜が降り不ぞろいな発芽となったため、開花の期間も長引きました。受粉の時期には、比較的気温が低かったため、その影響を受け花降るいや結実不良(特にミュスカ・オットネルとゲヴュルツトラミネール)が発生しました。
その後、7月初めに非常に高い気温を記録。その恩恵を受け成熟が促進され、畑の衛生的なリスクも抑えられました。収穫が近づき、数回にわたってブドウの成熟度を検査したところほど良い糖度と、酸度が高いことが確認できました。しかし、最悪な天候に見舞われた結果、ぶどうの成熟は品種や区画、地域によってバラつきが見られました。ブドウ畑を定期的に管理することで、ボトリティス菌の病害を防ぐことが出来ました。
収穫
Comité Régional d’Experts des Vins d’Alsace (CRINAO)によって決定された2010年の収穫日は以下の通りです:
収穫の途中、9月15日以降に乾燥した晴天がやっと訪れたことから、楽観的な希望が生まれました。結実が少なかったことから、酸度が良い具合に進化し、糖度が上がりました。
収穫量は、全体で2009年より21.8%減の911 950 hl(スティルワインでは26.8%減の670 880 hl、AOCクレマン・ダルザスは3.7%減の241 070 hl)でした。
ワイン
ヴィンテージ2010は、爽やかで果実味があり、一般的にアルザスワインの特徴として知られている個性を余るとこなく表現し、素晴らしい熟成能力をうかがわせます。完璧なバランスをワインに与えるため、生産者によるカーブでの熟成技術が重要なポイントとなりました。(主にシュール・リー熟成)
非常に爽やかでありながらも「熟して」いるため、クレマン・ダルザスは大成功の年となりました。ミュスカとピノ・ブランは見事な果実味。ピノ・ノワールは、色素が見事に抽出されたため、きれいな色合いが特徴です。この年、一段と少ない収穫量のゲヴュルツトラミネールは、2009年ほどスパイシーではなく、フルーティーでフローラル(バラ)なワインに仕上がりました。豊かな個性は、このヴィンテージの特徴である爽やかさとバランスが取れています。ピノ・グリは衛生状態の悪化を免れました。純粋で、非常にフルーティー、完熟フルーツ(梨)の香りを漂わせるバランスの良いワインです。リースリングの収穫量もまた少ないものでした。非常に爽やかで柑橘類のアロマを備えており、熟成能力の高さを期待させるワインです。貴腐菌の発生に不向きな晩夏・初秋の天候、および全体的な収穫量の低下から、この年のヴァンダンジュ・タルディヴおよびセレクション・ド・グラン・ノーブルの生産量も低下しました。しかし、2010年に生産された甘口ワインは高い品質を誇ります。
アルザスワイン委員会(C.I.V.A.)
2011年3月